2008年 04月 01日
江戸の宝暦から天明期の米相場師、慈雲斉牛田権三郎が著した「三猿金泉録」は、本間宗久の「三味伝」と双璧をなす相場の秘伝書である。 牛田翁は相場の極意を和歌に託している。良く知られているのが次ぎの一首。 野も山も 皆一面に弱気なら 阿呆になりて 米を買ふべし 相場は多数では決まらない。むしろ逆。「相場と幽霊は淋しい方にでる」といわれ、少数派に味方するのが相場。 万人が 万人ながら強気なら たわけになりて 米を売るべし まったく、今の原油、金、穀物の高騰を見て、「三猿金泉録」の神髄を思い知らされる。 「三猿」とは、見ざる、聞かざる、言わざるの三つ。牛田は言う。 「眼に強変を見て心に強変の渕に沈むなかれ。ただ心に売りを含むべし。 耳に弱変を聞いて、心に弱変の渕に沈むなかれ、ただ心に買いを含むべし。 強変を見聞くとも人に語るなかれ、言えば人の心を迷わす、これ三猿の秘密なり」 見聞(情報)を広めるのはいいが、それにとらわれて、自己の信念が揺らぎ、売買方針を変えてはならぬと翁は言う。また、相場観をみだりに他言してはならぬ。 真の相場師は古来、寡黙である。翁は十五の禁言を残しているが、そのひとつに「備えなき商ひならばいつにても 損得なしに商い禁制」。衝動売買を戒める。 とても意味深い。250年あまり前に記されたことだが、今の世の中でも充分に理解できる。 現代は、機械化や農薬、灌漑用水の技術が進み天災による「不作」は江戸時代に比べたら比較にはならないだろう。しかしある意味豊作貧乏になっていないだいろうか? 政治がらみで米相場が左右されるなんとも悲しい時代になったもんだ。
by kintarou776
| 2008-04-01 12:52
| あきたこまち
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